交通事故による後遺症とは?
後遺症を残さないための治療法や
後遺障害等級認定について解説
本ページでは、交通事故による後遺症の症状や残さないための治療法、後遺障害の認定について解説します。
交通事故による後遺症の定義と症状
交通事故によるケガの症状が「後遺症」として残ってしまうことがあります。この後遺症とは具体的にどのようなものなのか、定義や症状を解説します。
交通事故で多くみられる疾患・症状
まず交通事故後によくみられる疾患(ケガ)は、主に以下のようなものがあります。
- 骨折・打撲
- 頭部外傷
- むちうち(捻挫)
事故による軽症のうち、約6割はむちうちであるといいます。むちうちとは、いわゆる首の捻挫のことです。事故の衝撃で頭を激しく揺さぶられ、首が不自然にしなることで頚椎(首)にダメージが及びます。首の痛みはもちろん、頭痛・腰痛・だるさ・めまいなどの症状を引き起こすこともあります。
交通事故における後遺症とは?
後遺症は、自動車事故で受傷したケガの治療後、身体に残ってしまった精神的・肉体的な機能障害などの症状です。交通事故による受傷でよくある後遺症としては、むちうちによる首の痛み・腰痛・頭痛・関節痛・しびれなど多岐に渡ります。
後遺症と後遺障害の違い
後遺症と混同されがちなのが後遺障害です。後遺障害とは、交通事故で受傷したケガによる後遺症のうち、事故と後遺症との因果関係が医学的に認められ、さらに後遺症の影響で労働能力の低下や喪失が認められる状態のことです。後遺障害によって労働能力を欠いてしまう場合、後遺障害の認定を受けて慰謝料の請求が可能になります。
後遺症が残ったとしても、後遺障害に該当するかはまた別の話であり、必ずしも慰謝料請求ができるわけではありません。
後遺障害の認定手続きに関しては後述します。
交通事故後は整形外科を受診する
交通事故後はなるべく早めに整形外科を受診し、精密検査を受けましょう。接骨院や整骨院もありますが、医療機関である整形外科が受診先として適切です。
交通事故後すぐに病院に行くべき理由
交通事故後はすぐに整形外科を受診しましょう。
むちうちや骨折などの場合はもちろん、事故直後に痛みなどの自覚症状が無かったとしても筋肉や神経にダメージを負っている可能性があります。後遺症を残さないためにも、症状の程度に関わらず早期治療が重要です。
もし後遺症が残ってしまった場合でも、事故後すぐに治療を行っていれば、事故と後遺症との因果関係が認められやすいため、後遺障害の認定が受けやすくなります。
反対に、病院の受診が遅れると後遺症のリスクや、後遺症が残った場合に後遺障害の認定が受けられず補償が受けられない可能性が高まります。
そのため交通事故の被害を受けたら、当日または2〜3日以内には整形外科を受診するようにしましょう。
交通事故にあった時の対応については、こちらの記事で解説しています。
交通事故にあった時はどうすればいい?対応することから通院の流れまで解説
接骨院や整骨院との違い
整形外科と接骨院・整骨院とでは、治療方法や対応できる範囲が異なります。接骨院・整骨院では、精密検査や薬物療法、手術やリハビリなどの医療行為は受けられません。
接骨院や整骨院で施術を行う柔道整復師は国家資格を有しており、痛みに対する処置は行ってくれるでしょう。しかし、根本原因を特定し、医学的な根拠に基づいた施術を受けたい場合は整形外科がおすすめです。
また治療費の請求の際に必要となる診断書は、医師が作成するものであり、接骨院・整骨院では発行できないため注意が必要です。
これらの違いを踏まえると、整形外科の受診が最も適しているといえるでしょう。
後遺症を残さないための治療法
後遺症を残さないためには、早期治療がカギとなります。治療を放置すると、慢性的な痛みやしびれなどが残存し、日常生活に支障をきたしかねません。事故当日もしくは2〜3日以内、遅くとも10日以内には受診するようにしてください。
精密検査と医師の診断を受けたうえで、症状別に次のような治療法を実施します。
むちうちの場合
むちうちは軽度〜重度のものまで程度に幅があり、それによって治療法も異なります。
薬物療法・理学療法・物理療法・手術など、症状の程度や患者さまに合わせて適切な治療が選択されます。
むちうちについては、こちらの記事でも解説しています。
交通事故によるむちうちとはどんな症状?通院先や治療法、後遺症について
打撲の場合
打撲の治療法は、急性期と慢性期で治療法が異なります。あくまでも目安ですが、急性期は受傷から2~3日以内、慢性期は受傷から3日以降と言われています。急性の打撲の場合は、RICE処置と呼ばれる「Rest:安静・Ice:冷却・Compression:圧迫・Elevation:挙上」の処置をとるのが一般的です。
軽度であれば湿布や圧迫固定で治療できるでしょう。また慢性期では患部を温めて血行を促すことが効果的な場合もあるため、医師の指示を仰ぎ、適切な処置を行っていきましょう。
捻挫の場合
捻挫とは靭帯や軟骨のケガのことで、なかでも「首の捻挫」はよくあるむちうちの症状の1つです。捻挫の部位や程度によって治療法は変わります。捻挫の治療法は、手術か保存療法のいずれかになります。
大きな痛みはなくても、靭帯断裂などの大きなダメージを受けていることも考えられるため、早めに整形外科の検査を受けることが重要です。
骨折の場合
骨折の場合、骨の折れ方によって治療法は多岐に渡りますが、手術か保存療法が主な治療法です。骨にはもともと治癒能力が備わっているため、骨折部を固定することで骨がつくようになります。
骨の治癒能力を活かして、ギプスで骨折部を固定して骨折を治す治療法を保存療法と言います。一方手術療法では、金属性のプレートやボルトなどを用いて骨を固定します。骨折の程度や折れた部位により、保存療法か手術療法が選択されます。
交通事故で
後遺障害が残ってしまったら
交通事故のケガによる後遺障害を負ってしまった場合、後遺障害の認定を受けることで慰謝料及び、逸失利益の請求ができるようになります。
慰謝料は、後遺障害の第1〜第14級まである等級をもとに金額が決定されます。また逸失利益の請求とは、身体に残った障害により労働能力を失ったことにより、将来得られるはずであった収入分の請求のことで、交通事故前の年収をもとに計算されます。
後遺障害等級認定の手続きの流れ
後遺障害には障害の程度によって、第1〜第14級まで等級が定められています。介護を必要とする重い障害もあれば、日常生活にさほど支障がない程度の軽い障害もあります。ここでは後遺障害等級認定の手続きの流れをご紹介します。
症状固定になる
症状固定とは、これ以上治療しても医療効果が期待できない状態のことです。これ以上改善が見込めないと医師が判断すれば、症状固定となり治療は終了します。完治できず残った症状は後遺症となります。
後遺障害診断書を作成してもらう
医師が症状固定の判断をしたあと、後遺障害診断書を作成します。この診断書は医師のみが作成できるものです。後遺症と事故との因果関係と医学的根拠を証明するため、診断書がないと申請ができません。
必要書類を保険会社に提出する
診断書を含めた必要書類を、保険会社へ提出します。
申請方法は保険会社が申請する「事前申請」と、被害者側が自力で申請する「被害者申請」の2種類があります。
事前認定
加害者側の保険会社に申請を代行してもらうことを、事前申請といいます。診断書などを保険会社に提出すれば、必要書類を揃えて代わりに申請してくれます。煩雑な作業が不要で時間もかかりません。
しかし一方で加害者側の保険会社であるため、被害者側に寄り添った対応は期待しない方がよいかもしれません。書類の不備などで申請が通らず、不当な結果になることも考えられます。また、後遺障害が認定されても、保険金の受け取りは示談が成立したあとです。
被害者請求
自身で必要書類を用意し、自力で申請することを被害者請求といいます。代理人の弁護士とともに手続きをする場合もあります。
手間と時間がかかり大変ですが、認定を受けやすいような書類や資料を自分で用意できるため、自分に有利に審査を進めやすいメリットがあります。認定されれば、等級にしたがった保険金を示談成立前に受け取れるというメリットもあります。
損害保険料率算出機構が審査を行う
診断書を含む提出書類をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害に該当するかどうか審査します。書類の不備があれば修正したり、追加書類を送ったりします。
保険会社から認定結果が通知される
書類に不備がなく、後遺障害が認定されれば、認定結果が通知されます。必要書類の用意から結果通知までは、おおよそ1〜2ヶ月かかるのが一般的です。
ただし、書類の不備による修正対応があったり、ご自身の身体の状態によっては対応が遅くなり、さらに長引くこともあるでしょう。
後遺障害等級認定が受けられない場合
「事故との因果関係が認められない」「医学的根拠が不十分」などの理由で、認定されないケースも少なくありません。
結果に納得できない場合は、異議申立をして再審査を受けることが可能です。最初の申請で指摘された箇所を補えるような証拠書類などをまとめる必要があります。
また紛争処理制度を利用してより公正な審査を求めたり、最終的には訴訟を起こすというのも1つの方法です。結果が不当だと感じたら、これらの対応を検討してみるのもよいでしょう。