交通事故による症状の治療は
どこでどう行う?
よくある症状から通院の流れについて
交通事故の治療は
どこを受診すればいい?
交通事故の治療は整形外科を受診するのが一般的です。接骨院や整骨院でも取り扱っていますが、医療機関である整形外科が最も適しています。整形外科を受けるべき理由や、接骨院・整骨院を受診した場合についてご紹介します。
まずは整形外科を受診する
交通事故後は、たとえ軽症であってもまずは整形外科を受診しましょう。大きな外傷がなく痛みがなかったとしても、数日経ってから症状が現れることもあるからです。
整形外科では、レントゲン・CT・MRIなどを用いた精密検査で、目視では確認できない内部の損傷や骨折などを正確に診断できます。より効果的な治療を受けるためにも整形外科を受診することが推奨されます。
接骨院や整骨院を受診した場合
接骨院・整骨院を受診した場合でも、精密検査で正確な診断を行うためにも整形外科を受診することをおすすめします。
また交通事故の加害者側に治療費や慰謝料を請求する際、接骨院だけの受診では治療費として請求が認められない恐れがあります。のちに必要となる診断書などは医療機関でしか発行できませんので、まずは整形外科への受診が望ましいといえます。
交通事故によくある症状とは?
交通事故後に現れる症状や疾患はさまざまです。
整形外科を受診するのが基本的ですが、症状によっては別の診療科が適切な場合もあります。
むちうち
むちうちは、交通事故後に最も起きやすい症状です。車からの追突や衝撃によって頭を激しく揺らされ、首がムチのようにしなることで生じる、いわゆる首の捻挫です。医学的には「頸椎捻挫」「外傷性頚部症候群」などと呼ばれ、首の痛みや肩こりが生じます。
むちうちについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
交通事故によるむちうちとはどんな症状?通院先や治療法、後遺症について
打撲や骨折
打撲はいわゆる打ち身のことをいい、軽度であれば湿布などで治療が可能です。しかし重度になると通常よりも内出血や腫れが生じ、専門的な治療を要する場合があります。
骨折も交通事故でよくある症状です。症状の度合いや骨折箇所によって治療法は異なります。打撲や骨折は受傷直後の早期治療が重要ですので、早めに整形外科を受診しましょう。
外傷
外傷は、いわゆる切り傷や擦り傷などの症状を指します。見た目にわかりやすく、軽症であればすぐに完治できるでしょう。しかし傷が深かったり、傷口から異物が混入したりすると、外科治療やレーザー治療が必要になるケースがあります。この場合は形成外科が適切な場合もあります。
頭痛・吐き気
交通事故後に頭痛や吐き気が生じる場合があります。むちうちによくある症状でもありますが、強い頭痛が続く場合は、脳内出血や脳脊髄液減少症なども考えられます。頭を強く打った、頭痛が治らないなどの場合は、脳神経外科が適していることがあります。
その他身体の痺れやめまい、食欲不振など
痺れ・めまい・食欲不振などの症状が生じることもあります。神経を損傷している重度なむちうちの場合、このような症状が現れる場合があります。
交通事故の治療の流れ
交通事故にあった場合、まずは警察(110番)に電話します。その後保険会社へ整形外科を受診する旨を伝えてください。来院前に保険会社に連絡をすることで、治療費を負担せずに済みます。
以下で骨折の場合とそれ以外の場合の治療の流れを、大まかにご紹介します。
骨折などのケガの場合
- レントゲン検査で骨折の有無を確認
- 骨折が判明したら、ギプスを作成し骨折部を固定
- 骨折部周囲の関節や筋肉を動かすリハビリを実施
骨折の有無はレントゲン検査で確認ができます。骨折が確認できたら、骨折部をギプスで固定して治療するのが一般的です。骨折の程度によっては外科治療が必要な場合もあります。
必要以上に安静にしていると、かえって骨折部周囲の関節や筋肉を弱らせてしまうことがあるので、医師の指導のもとリハビリを行い、日常生活復帰を目指します。
骨折以外のケガの場合
- レントゲンやCT、MRI検査を実施
- 症状に応じて適切な治療を受ける
- 約2〜4週間後にリハビリを実施
交通事故のむちうちは、軽度から重度のものまでさまざまあります。検査結果をもとに、症状に応じた適切な治療を受けることが大切です。主な治療法は、薬物療法・理学療法・物理療法・ブロック注射などがあります。
初期段階では安静にすることが基本となりますが、痛みがおさまってきたらリハビリで身体を動かすことで心身機能を回復できます。
接骨院や整骨院に通う前に
接骨院や整骨院での治療も一定効果が認められており、整形外科との併用も可能です。しかし整骨院などに通う前に、やっておくべきことがいくつかあります。あとで病院や保険会社とトラブルになりかねないため、次の点を押さえておきましょう。
病院や整形外科で診断を受ける
整形外科でレントゲンやMRIなどの精密検査を行い、正確な診断を受けることが重要です。必ず整形外科などの医療機関で診断を受けてから、接骨院・整骨院での施術を受けるようにしましょう。
担当医の許可を得る
接骨院・整骨院で施術を受ける場合、必ず医療機関の担当医の許可をもらう必要があります。
接骨院・整骨院は国家資格である柔道整復師が施術を行いますが、医学的な専門知識や技術を必要としません。
担当医の許可がないと保険会社に費用を請求できない場合があるため、必ず医師の許可をもらっておきましょう。
保険会社に連絡する
接骨院・整骨院に通う場合、医師の承諾を得たうえで、保険会社にも連絡する必要があります。接骨院での施術は医療行為として認められないケースもありますが、医師の許可があれば保険会社に施術料の請求が可能になります。
担当医の許可を得ていることや、接骨院・整骨院に通うことを事前に連絡しておきましょう。
病院や整形外科クリニックに、併用する旨を説明してから通院する
接骨院などを併用して通院する場合は、事前に病院にその旨を説明しておきます。併用して通院する場合は、月に1回以上は病院で治療継続の必要性を診断してもらいましょう。担当医が治療不要と判断するまで、併用して通院することになります。
なお、医療機関によっては接骨院・整骨院との併用をよしとしない場合があるため注意が必要です。
接骨院や整骨院に通う際に
注意すること
接骨院や整骨院などに通院する場合、次のような注意点があります。
無資格者の施術料を請求することができない
接骨院や整骨院では、基本的に国家資格を有する者が施術を行います。この場合は、病院の医師から許可をもらったうえで施術料を保険会社に請求できます。
しかし似たような整体院やカイロプラクティック院などは、資格を有さない方が施術を行っているケースがあります。この場合は、無資格者による施術となりそもそも請求ができませんので、間違えないように要注意です。
診断書の作成ができない
接骨院や整骨院では、診断書を作成できません。診断書は人身事故として扱われるための申請や、後遺障害の認定申請の際に必要になります。
そのため診断書がないと治療費・慰謝料などの請求ができず、不利益を被る可能性があります。接骨院を受診した場合でも、必ず整形外科を受診して診断書を発行してもらいましょう。
整形外科に通院していることを必ず説明する
接骨院・整骨院を併用して通院する場合、必ず整形外科に通院していることを説明しておきましょう。これまでの経過や診断内容の共有も必要です。しっかり情報共有できていないと適切な施術が受けられず、かえって患部を悪化させてしまう可能性も考えられます。併用して通院する場合は、なるべく丁寧に情報共有を行うようにしましょう。
交通事故の治療費の支払いについて
交通事故の治療費は、加害者側の保険会社が負担するのが一般的です。ただし場合によっては、被害者側が一時的に負担する場合もあります。以下で詳しく解説します。
一般的に加害者側の任意保険会社が負担する
支払いは加害者側の保険でカバーできることがほとんどです。保険には加入が義務付けられた自賠責保険と、任意で加入する任意自動車保険があります。どちらも費用を負担してくれますが、任意保険の方が補償の範囲が広く、手続きも円滑であることが多いです。
特に「任意一括対応」は任意保険であるとスムーズに受けられます。任意一括対応とは、保険会社が受診する医療機関に直接支払ってくれる対応のことです。交通事故の際は、相手側の保険会社についても知っておく必要があります。
被害者側が負担する場合もある
以下のケースでは、被害者側が治療費を負担しなければならない場合があります。
- 加害者側が任意保険に未加入である場合
- 加害者側の任意保険会社と揉めている場合
- 被害者側にも一定の過失がある場合
- 物件事故として処理されている場合
上記のようなケースでは一時的な立て替えとして支払い、のちにしかるべき対応をすれば加害者側の保険会社に治療費の請求が可能です。
治療費の打ち切りを打診される場合がある
治療期間が一定期間を過ぎた頃に、加害者側の保険会社から治療の打ち切りを打診される場合があります。これは保険会社の都合による判断であり、治療継続の可否は本来医師が決めるものですので、鵜呑みにしないようにしましょう。
保険会社から不当な打診があった場合、まずは担当医に相談するのがよいでしょう。医師が治療継続と判断して診断書を作成すれば、引き続き治療を続けられます。しかし医師が継続は不要と判断すれば治療は完了し、保険会社からの支払いも終了します。
途中で治療する病院や整形外科を
変更することは可能?
治療途中でも病院や整形外科の変更は可能です。「通院が困難」「治療内容が合わない」など、さまざま理由があるでしょう。そのような場合に別の医療機関に転院することで、よりご自身に合った治療が受けられることもあります。
転院の手続き
転院の手続きでは、担当医に要望を伝えたうえで紹介状を作成してもらうとスムーズです。これまで受けた検査結果や治療内容を他院へ引き継ぐことで、再び検査を受けたり説明をしたりする手間もなくなります。
また保険会社にも転院する旨を事前に伝える必要があります。治療費の支払いが他院に変更になるので、ここでも引き継ぎがないと治療費の支払いが滞ってしまう恐れがあるのです。転院する旨はもちろんですが、その正当な理由を説明できるとなおよいでしょう。
保険会社に転院を拒否された場合
保険会社から転院を拒否されるというケースもあるようです。転院する正当な理由をしっかり説明したうえで、それでも拒否された場合、保険診療での治療継続も検討します。
健康保険を利用すれば3割負担となります。自己負担した分は、のちに保険会社に請求ができるか交渉していくことになるでしょう。